相続相談について
相続税の税制改正の大きな二つのポイント
(1)最高税率の引き上げ
今回の税制改正によって、相続税の最高税率が従来の50%(資産3億円超)から55%(資産6億円超)に引き上げられる。ただし、税率がアップするのは、2億円超(2億円以下は従来どおり)の資産を相続する人だけだ。一般的なサラリーマン家庭であれば、この影響を受ける人はさほど多くはないだろう。
(2)基礎控除額の大幅引き下げ
一方、基礎控除額はこれまでの「5000万円+1000万円×法定相続人の数」から、改正後は「基礎控除額3000万円+600万円×法定相続人の数」となる。仮に相続人が妻と子ども2人なら、これまでは8000万円までの相続は基礎控除額以下となるので相続税はかからなかった。ところが改正後は、相続財産のうち4800万円を超えた場合は課税対象となるため、地価の高い都心などに自宅を所有する人の多くは課税対象の範囲内に入ってくる。
相続大増税に、節税を考える際は、できるだけ不動産などの評価額を抑え、少しでも納税額を減らすことが対策の大きなポイントとなる。
“相続大増税”時代に 備える相続税対策
2013年度の税制改正で相続税が大幅に増税されることが決定。2015年、本年に実施されました。これまでは人ごとのように思っていたのに「自分も納税しなければならなくなるのか?」と不安を感じている人も多いに違いない。
“相続大増税”の時代をどう乗り越えるべきか?
相続大増税に、節税を考える際は、できるだけ不動産などの評価額を抑え、
少しでも納税額を減らすことが対策の大きなポイントとなる。
相続に強い専門家に相談したほうがいい人とは?
1.相続税がどの程度か事前に知りたい人
2.相続税申告で節税したい人
3.資産に土地が多い人
4.相続準備や納税資金の確保をしたい人
相続税対策の「五原則」
相続税対策には、さまざまなやり方があります。それを分かりやすく整理すると五つにまとめることができます。相続税対策は、この五つの原則を柱として考えると分かりやすくなります。もちろん資産評価を済ませておくことが、対策を進めるための前提です。
対策その2 : 所有財産の評価額を下げる
対策その1 : 相続人を増やして税率区分を下げる
対策その3 : 返済可能な借金を多く作る
対策その4 : 生前贈与をして財産を減らしておく
相続税は累進課税の段階税率になっていますから、一人当たりの相続額を少なくして低い税率区分にあてはまれば、納税額はがくんと減ります。また相続人が一人増えるごとに基礎控除額が1000万円追加されます。
ということは、相続人の数を増やせば全体の相続税を減らすことができるわけです。そこで出てくるのが「養子縁組制度」によって相続人を増やすという方法です。
養子縁組をすることで、相続人の相続分が細分化されます。民法上は、養子縁組は何人でも可能ですが、相続税法では、実子がいる場合には養子は何人いてもまとめて一人になり、1000万円の基礎控除額の加算が認められます。ただし、実子がいない場合は2人まで認められ、基礎控除額は2000万円になります。
このほかにも、生命保険と退職金の非課税枠(法定相続人一人500万円)が増えます。
土地・建物は、利用状況に応じて財産評価基本通達により評価減があります。
更地で土地を持っている場合は、そこに建物を建てることで相続税評価額を大きく下げることができます。中でもアパートやマンションを建てて人に貸すことは、多くの地主さんがとっている典型的な相続税対策です。これは所得税、固定資産性の節税にもつながります。
また小規模宅地等は50パーセントの評価減がされますが、一定の条件を満たすと、特定居住用小規模宅地として80パーセントの評価減になります。この条件にあてはまるように持っていけば土地の評価額が下がりますから、相続税額も下がります。
借入金の残額は全額債務控除となるので、相続税を大きく減額する効果があります。
更地に建物を建てる時に借金をすると、さらに効果的な相続税対策となります。ただしその借金は返済可 能なものでないと、返済に苦労することになります。返済可能な範囲で借金を多く作るのがいいということになります。
財産を自分の名義で持ち続ければ、自分が死んだ時には当然ながらまるまる相続税の課税対象になります。
だから生前に手放せるものは手放すようにした方がいいのです。子供や孫に生前贈与して、財産を減らすことを考えてみてください。
贈与税は高い、という先入観があるものですが、年間110万円までの基礎控除のほかに活用できる特例がいろいろあります。ただし相続が発生した時点から3年以内に贈与されたものは、相続税の対象なってしまいます。だからなるべく早く生前贈与を始めた方がいいのです。
対策その5 : 納税資金として生命保険と自己株式を活用する
ここまでやっても巨額の税金がかかってくる場合もあります。そこで地主さんの場合、納税資金にあてる目的で大口の生命保険に加入するのが一般的です。
相続が発生するとすぐに現金が用意できるし、保険の掛け金を払うことで、相続財産を減らすことになります。
また、事業を経営している場合は、全財産を会社につぎ込む人がよくいます。会社の内容が優良であればあるほど株価も高くなりますが、未上場会社の場合は一般市場性のない株ですから売りたくても売れません。それでも万一の時には高い株価に対して相続税が課税されてしまいます。
これについては商法の改正で、自分がオーナーであった会社に一定量の株を買わせることができるようになりました。そのことにより、会社が株を買い取ったお金で遺族が納税できるようになっています。